黄色くない黄玉



Topaz。 日本語では黄玉ですが、これは無色。
赤い色は、着ている服が映り込んでしまったもので、これは失敗。
ビシッとした結晶面には、水晶とのレベルの違いが見て取れる。
見とれてしまう。

トパーズと言ってすぐに思い出すのは、智恵子抄。
高村光太郎は「トパアズいろ」を「香気の色」と形容しているけど、
それは、明らかに黄色のトパーズの事だろう。
岐阜県では無色や水色系はそこそこ取れるけれども、黄色系統となると難しい様で、
未だに手の届かない、あこがれの石の一つ。

趣味にはあこがれや目標が大切ですが、
黄色い黄玉は、その代表格の石です。

★★★★★山 梨県甲府市黒平産


この石には失敗談があります。

今までこの産地を歩くたびに、目に付いた透明や無色の石を多く拾っていました。
トパーズの破片ではないかと期待してです。これまでに一体、幾つくらい拾ったでしょうか? 
仮に一日に5個を拾ったとしても、ゆうに百個以上になっていましょう。
そして、それらはことごとく石英でした。(この石を拾うまでは。)
ですから、もうこの頃には、全く望み無しと考えていて、
拾い上げても、ろくすっぽ確認せずにポケットの中に入れて、
帰ってからのささやかな楽しみとして、家でチェックする様になっていました。

この時はそれさえ忘れていて、次に山に入った時に、ポケットに前回の石が数個入っている事に気が付き、
カメラに傷が付くのはいやだから捨てようと思い、まあ一応はチェックしてと、珍しく持っていたルーペで眺めて、
何か変だけれども、まあいつもの様に石英だろうからさっさと捨てようと考えて、一度は足元に落としました。
しかし、これがガラスのごとくあまりにも綺麗だから、無色の水晶の見本として、一応取っておくかと思い直して、
再度拾い上げたのでした。(何せ、産地は煙で有名な場所なので、無色の水晶は少数派なのです)
それを家に帰ってから再度眺めて、その時になってようやく、これは本当にトパーズだと気がついたのです。
条線に対して劈開面があるべき所を、しっかりとチェックしなかったのが間違いの元でしたが、
岐阜県で採集している、気性脈からのトパーズとは形状が全く異なっていた事も、誤認の一因でしょう。
劈開面もわずかな面積で、ちょっと見落としました。

しかし何が失敗かと言ったら、拾った場所が特定出来ない事なのです。
歩いたルートはほとんど把握しているのですが、どの地点だったのか覚えていない。
これは、とても痛い事でした。
この石を手掛かりとして、トパーズガマを探す事が出来ないではありませんか。

以来、白っぽい石を拾う時にはかなり気をつけていますが、
トパーズが、このような強い輝きを持つと知ってからは、拾う個数はずっと減ってしまい、
山での楽しみがちょっと減った感もあります。