追う


新しいポイントを開拓するには、ひたすら歩くしかない。
その歩き方は、産地にもよるし、人それぞれだろう。

ハゲはペグマタイトを探すには一番楽だが、人目に付き易い所なので競争率も高い。
もっとも、ハゲは日々風化が進むから、定期的な巡回は欠かせない。
ハゲでないとすれば沢筋か単なる森だろう。
斜度の大きな斜面を歩いていると、ときにこの写真の様に、白い石が落ちているのを目にする。
石は飛ばないから、必ず上から落ちて来たものであるが、落ちて来た原因で一番多いのは
上にハゲやガレ、堀場があって、人が掘り落としたというパターンである。
その場合は、登るに従って石英長石がどんどんと増えるから、ああ、堀場がありそうだなと察しがつく。

ところが、上に登っていっても大して変化のない事がある。そういう時は怪しい。
この時には、文字通り点々とまばらに落ちており、それを目印にスコップを立てながら登っていったら、
意外に少ない回数で、崩落ペグマに当たった。
もっともこの時のペグマでは、晶洞はほとんど出来なかったらしく、
「大きな脈石」で紹介した石くらいしか見るべきものは出なかった。

これを残念と言うか? いや、すごくラッキーとしなくてはいけない。
ペグマに当たる事自体が、宝くじに当たる様なものであるから。
半日近く遊ばせて貰えたのだから、山に感謝であろう。

採集を初めて間もない頃に一度、しっかりと結晶した長石を拾った事がある。
この時は、拾っただけでとても満足して、追うことも何もしなかった。
だけども今にして思えば、付近に崩れた晶洞が眠っていたに違いない。
カチッとした長石の結晶が出るところからは、良い水晶も出る事が非常に多いから
あの時の事を思い出すと、残念で仕方がない。