採集紀行・青空の下で 



季節で採集地を選んで山に入る事も多いが、この時期は探査に好都合である。
理由としては、葉が出ていないので見通しが効く事。陽が長くなって陽気も良く、
知らない場所でも不安感の少ない事が挙げられる。
そんな訳で、恒例となった未踏の山域の探査に入る。

曇りがちの日ではあるが、時折陽が差すと、景色は生き生きと浮かび上がる。
大体の山域は決めていたが、どこから入るかは、気分次第。
しばらく沢に沿って歩いて、ここかなと思った所から枝沢に入る。
左右をあちこち見ながらも真っすぐ登って行くと、良い感じの崖があり、
ペグマが露出していて、晶洞のありそうな場所も見つける。
急峻な崖なので、スコップで足場を作りながら接近するが、肝心の水晶は無し。
しかし、自分の命を賭けての行動は、真剣そのもの。
一歩踏み出すだけでも、しっかりと安全を確保してゆっくりと進むから、かなりの緊張を強いられる。
自分は多分、そんな危険な行為が好きで、この地に好んで入っているのではと思う。
日常の生活には決してない、スリリングでデンジャラスな時間である。

ハゲ歩きは常に緊張を強いられるから、絶対安全で眺めのいい所を選んで昼食を摂る。
と、頭上を横切るものがある。
すぐ近くの樹木に止まった鳥を、動かずに注視していると、ポポッ、ポポッ、ポポッ、と鳴き出す。
ツツドリである。ツツドリ、ホトトギス、ジュウイチは、鳴かないと見分け難い。
鳴いて良かったと思う。ツツドリが鳴いているのを見たのは、初めてだ。
飛んで行った先でも鳴いているのが聞こえる。
曇った空の下に仰向けになって休憩した後に、地図をチェックして、
今後のルートをだいたい決めて、再び歩き出す。

しばらく歩くと、ハゲが次から次へと出て来るようになるが、これが、とっても楽しい。
色々な国々を巡る、世界旅行の様である。
地質も色合いも、地形のうねりもそれぞれ違っていて、どこも風情がある。
次はどんな国だろうかと、ワクワクして歩く。
野うさぎが飛び出してビックリしたりもする。
しかし、時々ペグマを見るものの、結晶質のものはほとんど無い。

割と広く歩いたものの、令和になって最初の採集行は、残念ながら坊主に終わる。
下山して、雨のパラつく中でカップヌードルを食べ終わると、
緊張がほぐれたからか、急に眠気に襲われて、ひと時眠ってしまうが、雲から漏れ出た陽の光に起こされる。
天気が変わったようだ。


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