石器
左は水晶、右は黒曜石。
この煙水晶はほとんど4面しかない。2面はとても小さくて、無いに等しい。
だから、断面は平行四辺形であり、あまり水晶らしくない。頭は部分的にある。
驚く事に平行連晶であり、中央部の黒い線は、もう一つの結晶の柱面の影だ。
この石は何かを想像させると、ずっと考えていたが、ある時に繋がった。
パンを切るナイフなのであった。そこから連想は広がった。
もしも、大昔の人がこの石を得たならば、きっと喜んだに違いない。
金属器の無かった時代、尖ったエッジは肉を切り刻むのに、とても重宝したはず。
その時の自慢げな顔つきが目に浮かぶようである。
だいぶ以前の事、山奥のガレ場の下で、煙水晶の破片を拾った。しかしそう思ったのは間違いで、
後でそれは黒曜石である事を知った。納得した。なぜなら、拾った場所は
他に石英っ気が全く無い所だったからだ。そしてこれが石器である事を悟った。
事実、握ってみると、恐ろしい程、手に馴染むのである。
石器時代には、このような石はとても大切にされた事だろうから、よもや、落とした物ではあるまい。
きっと、ガレ場の上あたりで、行き倒れたのだろう。だから遺品である。これを握ると、その人と結ばれた気がする。
二つの石は、現代人である私がしっかりと受け継いでいた太古の記憶を、そっと思い起こさせてくれる。
左 ★★★山梨県甲府市
黒 平産
右 ★★★★★★山梨県水晶峠、荒川沿いにて拾う