ズリの見本


かなり昔の写真。
これぞ、正真正銘、正しきズリとでも言いたくなるような風景である。

何を目的として掘られていた所だったか忘れてしまったし、
今となっては、調べようという気も起きないが、この風景は忘れもしない。
多分、写真を撮った時の割と直前まで、稼働していたに違いないと思われた。
ベルトコンベアーで上から落とされて、山になったに違いあるまい。
そして、草さえも全く生えていないのは、山中にあっては異様な風景であった。

この風景を見て真っ先に想像したものは、ボタ山である。
五木寛之の本にしばしば登場するこの山は、石炭鉱山のズリ山のことであるが、
人の営みの何とすごいことか。
蟻の巣穴の周りに、シフォンケーキを思わせるズリ山が出来るのを稀に見かけるが、
あれと同じで、無意味であるのに美しさがある。
鉱物の美しさと、どこかで交わっている気がする。

この美しさは、今ではきっと失われているに違いないと考えた瞬間に、
どうなっているか、急に見に行きたくなる。