10回に一回


水晶の出る森を歩いていると、こんな場面には時々遭遇する。
そのほとんどが昔の堀跡か、それが上にある場合だが、
これを目にした時には瞬間的に、「あっ!」 と思った。
上は、一見して何も落ちていない普通の斜面で
そして、堀跡であれば地形が歪んでいるはずだが
ここは、変化のない連続した斜面だったからだ。

だから、まずは写真を撮った。
それから、スコップで突いてみた。
そして、ペグマが続いて出てくるのを確認してからリュックを近くに下ろして更に掘り、
結晶が出るのを見て、リュックを脇の高い位置に移動して熊手を出し、
それから、本格的に掘り出した。

結果は、規模こそ中程度だったが、完晶に成り難いタイプで単晶は小さく照りもなく、
収穫は「始祖鳥」くらいだった。
けれども、その日1日森を歩いた成果としては余りあるほどの、楽しい時間を過ごせた。
10回に一回くらいしか巡り合わない幸運だろう。