採集紀行・青空の下で 



無人の神社は桜が満開で、山は新緑の美しい季節なのに、天気の良くないのは残念だ。
さすがに標高が少しあるせいか、若葉の出方がまだ少ないが、それも日差しが無いために緑が映えない。
そんな中でところどころある美しいピンクの山桜に目が留まるのは、
今年が色の当たり年なのか、若葉に目が行かない事から来る注視のせいなのかは分からない。
途中にあるシャクナゲ林では、いくつかの蕾が赤く色づいていて、これもかなり色が良さそうだが、
考えてみれば、ここまで早い時期にシャクナゲを見た事がなく、
シャクナゲの固い蕾の色を知らないからだろう。
これで開花すれば薄いピンクになるはずだが、その色はどうなのだろうか?
また2週間くらい経ってから見てみたいが、蕾の群生もなかなか良いものだ。
なんだか森に強い意志みたいなものを感じる。

秋に出会った晶洞に続きがあるように思うからタガネを持って来てみたが、残念ながら先は無かった。
一旦ハゲに降り立つと、そこから出たくなくなる。
本当はこの次には別の場所への移動を予定して来たのだが、
ここから去り難くて、ついつい探査を続けてしまう。
しばらくやると、小さなペグマを見つける。
叩くと最初に3センチくらいの水晶が出てから続けて小さな水晶が出てくるが
これがバカみたいに小さい。多くが米粒ほどだからそのまま流しても良いのに、
なぜだかムキになって岩粒から選別して拾い上げる。
20個くらいにはなったかなといった辺りで、さすがに飽きて、ここを見限る。
更にいくつかの小さな晶洞をやった後に、割と大きなペグマを見つける。

握りこぶしよりも大きくて、立体的でカチッとした形のそのペグマに、気持ちは一気に高まる。
ここ何年も良い晶洞には当たらなかったから余計にワクワクするし
5センチを超えてくるのではと思う。
はじめに足場を作ってから叩き出すと、すぐに晶洞に当たる。
まずは変な形の扁平の水晶が出て、そのあとは厚いガラスが層状に割れ たような石英がザクザクと出る。
普通は晶洞が開いた後の中身は晶洞の底に落ちてあるものだが
ここでは晶洞の中にガラス屑を詰めたかのようで、茶碗何杯分かの黒っぽい石英を掻き出して
さて下から何が出てくるかと思いきや、終了、、、。
先の米粒水晶といい、このペグマといい、初めての展開にガッカリするが、自然の事ゆえに仕方がないし
ある意味では、これもまた楽し。
この辺りは晶癖が悪そうだと考えて、リュックを背負って大きく移動しながら探査をするものの、
成果が出ずに時間となる。

久しぶりの長時間のハゲ滞在に体力を使い果たして、帰りは何度も立ち止まりながら歩く。
今夜はよく眠れそうだ。

 


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